#38 坊主丸儲け。 | 不揃いの林檎たち

#38 坊主丸儲け。


 人は死にます。それはもう、絶対です。大統領も殺人鬼も神父も妊婦も、そりゃもう公平に、平等に死にます。不公平です。で、死ぬとどうなるかというとですね、日本のシステムでいけば神様になります。死んで付けられる戒名っての、あれですよアレ。で、その神様にもランクがあってですね、たくさん金を払ったほうが高い位の神様になれるんだそうです。

狂ってます。

 どうしても理解ができません。私なんぞは死んだらそのへんの川に流してもらって結構ですし、墓もアイスの棒でかまいません。できれば当たりの棒を使って欲しいですけど。しかし実際親戚が死ぬとそうもいかない大人の事情ってのがあるみたいで、つい先日もクソ忙しいのにジイさんの三回忌に行ってきました。で、こんな時しか集まらない親戚が集合して法事が始まったのですが、悲しいことに私の親族は軽く気がクルってるのが目白押しなので、それはそれは愉快な法事になりました。

・・・まず朝10時に現地に集合したのですが、石油ファンヒーター2台がフル稼働しているのに部屋が極寒です。ハイ、窓が開いてますね。どうして誰も気がつかないんだろう。ヒーターの前で丸くなってる叔父さん、アンタに言ってるんですけど。で、軽くタメ息をついたりしてると坊主が到着。ありがたい読経が始まるのですが、私と弟は直前まで10時間耐久徹夜マージャン大会に参加していたので二人して寝ちゃいました。さすがに起こされたんですけど、眠くてしょうがありません。しかたがないので近くにあったビニール入りの新聞を開いたら何故か5月の新聞で、「ジーコジャパンに勝機」とか書いてあって、なんかもうカオスです。

 で、2歳児の子供が坊主の鳴らす鐘にあわせて「チーン!!」とか叫びはじめたあたりでやっとお経が終了。さあ寿司喰って寝よう、と思ったら墓参りに行かなきゃならないんですね。叔父も「栓抜きがないぞ」とか言ってますけど、どうやら強制参加らしいので皆で墓に向かいます。で、ウチの墓は共同墓地の中でもちょっと小高いとこにあるんですけど、坊主が坂を上れないとかいう理由でウチの墓まで来てくれません。坂の中腹で鐘持って待ってんの。ウソつけ、オマエそこまで来てんならあとちょっと上れるだろ。誰の墓拝んでやがんだ。

 当然これに怒った叔母が「ふざけてる、檀家変えるぞ檀家!!」とか叫びだして、また周りのキチガイも「檀家変えるのめんどくさいらしいよ」とかフツーに寺変える方向で話し合い始めて、弟は隣の墓の水入れにタバコ捨ててますし、イトコの女子高生は「卒業したら、東京のアクセサリー作る専門学校に行くの」とかいう狂った詩を吐いてます。みんな頭がメルヘンです。
 そんなとこに遠くから坊主の「チーン」とかいう鐘の音が悲しく響いたりして、ソレにキレた叔父が「黙ってろ、テメーは!!」とか鐘の音の17倍くらいの音量で叫びだしたので、私は先に帰ることにしました。

・・・さて。こうしてつつがなく墓参りは終了したのですが、この脱力感はいったいなんなんでしょうか。自分にはどうすることもできないことってあるんですね。・・・チーン。