#36 明日のためにそのいち。 | 不揃いの林檎たち

#36 明日のためにそのいち。


 青春の終わりってのはたいてい土足でやって来ます。    ~孔子~






 新聞で読んだのですが、日本語が乱れているそうです。


・・・事のついでに性のほうももっと乱れたりしませんかね。ついこないだもスーパーで半額のニラを2束買おうか1束にしとこうかと迷っていると、なんか制服姿の女子高生様が長イモをゴロンと床に落っことして、「あっ」ってカンジでパッとしゃがんで拾ってたんですけど、無防備というかノーガードというか、普通にしゃがんだモンだからパンツが丸見えで、とか思ったらブルマで、「ふざけんなっ、その長芋ブチ込んでやろうかっ!!」とか一瞬すごい暗い、闇のフセインみたいな気持ちになったんですけど、よく見ると、いやよく見なくてもすごいブサイクな女子高生様で、そうれはもうフリーザの手下だった二人のうちの、ザーボンさんじゃない方、あんなカンジの体たらく。思わず「災い転じて福となす」とかいうことわざが思い浮かびましたが、何も得はしてないですね。あ、私も長芋買おうっと。


 何の話したかったんだっけ。・・・ああそう、日本語の話。ヤバいらしいですよ日本語。「ヤバい」が「すごくイイ」の意味で使われてますからね最近は。で、それがまた辞書に載ってるそうで、広辞苑も侮れませんな。広辞苑マジヤバい。


 しかし日本語の乱れは深刻で、私もこないだ若い友人に「涙橋を逆に渡ろうぜ」(※1)とか言ったらキョトンとされましたが、あしたのジョーを教科書にしないからいけないんだ。なってない、行政が。







※1 「涙橋を逆に渡ろうぜ、ジョー!!」


 とある場所に、一般階級層の住む地区と貧しい地区を隔てる橋があった。その橋を渡り、貧しい地区に落ちぶれてくる人間は皆、目に涙を溜めて橋を渡ってくる・・・という故事から涙橋の名が付いたという。
「二人でがんばって、この貧しい地区から抜け出してやろう」という意味を込め、丹下段平氏が矢吹丈氏(※2)を激励した「涙橋を逆に渡ろうぜ」は古今に比類が無いほどの名言。



※2 矢吹丈


 少年院にいた時、名伯楽丹下段平氏にその才能を見出された稀代のボクサー。通信テキスト「あしたのためにその1~3」でボクシングに触れたとされ、プロ入り後ノーガード戦法等で人気を博す。強打ゆえ対戦相手が度々故障し、「壊し屋ジョー」「死神ジョー」と恐れられた。

 少年院時代からのライバル・力石徹(※3)が矢吹との試合後に死亡するという悲劇を乗り越え、ついには世界チャンピオン・ホセ=メンドーサに挑戦。結果は追い詰めるものの判定負け、試合後に死亡した。矢吹の遺体は真っ白だったという。生涯成績24戦18勝(18KO)5敗1分、記録よりも記憶に残るボクサーだった。



※3 力石徹


 将来を嘱望された天才ボクサーだったが、宿縁・矢吹丈との決着を付けるため、二回り大きい体格を過酷な減量で絞ってバンダム級に参戦。幽鬼のような体で矢吹と戦い、アッパーのみで戦うという玉砕戦法を採用せざるをえなかった。この死闘に勝利するものの、試合後に死亡。
 後に成長期の矢吹も体格がバンダム級に収まらなくなったが、力石が俺と戦うためにきてくれた階級だから、と頑として階級を上げなかったという。「俺はバンダムに生きる」は震えがくるほどの名言。




                 民明書房館・丹下段平著「明日のためにその一」より抜粋