#2 死国一周弾丸ツアー、3名様ご案内。 | 不揃いの林檎たち

#2 死国一周弾丸ツアー、3名様ご案内。

 

 こんにちわ。またお会いしましたね。運命でしょうか 宿儺です。




 あれはまだ私たちが童貞だった高校二年生の頃、その夏休みの終わり二日前のことでした。



 

 林の家でフキダマっていた私・純・林は その日も「菅野美穂とヤリたい」などと 非生産的な会話ばかりし


ていたのですが、なにかの拍子に瀬戸大橋の話になりました。

 

 

 当事はまだ明石海峡・しまなみ街道などは開通しておらず、瀬戸大橋は四国と本州を繋ぐ唯一の「橋」だっ


たのですが 私はその開通間もない頃渡った事があり、ライトアップされた橋はとてもキレイだった、と語った


のです。

 


 ・・・それを喋ったのが地雷でした。純も見た事があるのが判明、林が「見たい」と言い出したのです。・・・そしてすぐに日本地図を出してくる林。 

 



私「・・・ちなみに言っとくけど、行かないよ?明々後日から学校だし。」 


林「だねえ。で、明日何時集合?




 
いったい何を謳っているのでしょうか、この末っ子は。

 

 この後 彼はコンパスで距離を測り、「だいたい片道150キロ、原チャリがリッター20キロ走るとして 千二百


円もあれば行ける」との事。


 

 食事代が入ってない、距離計算が大雑把すぎる、そもそも掛け算が間違っている などツッコミどころ満載のこのプラン。




地図  この縮尺で距離計算かよ


 



 時間も朝6時に出て30時間後の 明後日夜中に帰ってくるという弾丸ツアー。修行かな?

 

 

 この後 私と純が「マジで行くの?」 と12回くらい聞きましたが、

「ああ、もう決定事項。」と旧ナチスも真っ青の強権発動。





その後この末っ子のヒットラーに


「明日6時にコンビニ前、千五百円持って集合ね。じゃ 明日に備えてもう寝よう。オマエらもう帰れ

と言われ、

 



彼の家の愛犬パブロフ に吠えられながら帰宅する私と純。

 





 

 恐ろしい事に純までが少し楽しそうにしています。間違いなく無謀なプランだと思うのですが。

 







・・・実際、無謀でした。

 

 




 






 翌朝、これまでの経験と実績から 間違いなく時間通りにはこないモンスター二匹が相手なので、朝8時にコンビニに向かう私。




 誰も居ないコンビニで軽くタメ息をついた後、中でマンガなどを閲覧しているとすぐに純が到着。第一声が


「お、早いね」
でしたが低血圧なのでツッコミません。そして二人で四国地図を立ち読みしてみた所、ど


うやら片道150キロどころではない事が判明・・・


 純に恐る恐る所持金を聞いてみると 三千円持っている、との事。私が五千円もっているのでなんとかなりそう


です。今から考えれば純の三千円はもとより私の五千円も相当に不安を覚える金額ですが、当事は無敵だった


のでしょうか。




 この後30分ほどして林が到着。第一声は「さあ行こうか」でした。

 


 さすがは総統閣下、言い訳などと言うモノは辞書にないようです。

 


 この後「そんなんじゃ社会に出たらやっていけないよっ!!」 などと至極真っ当な説教をしてみたんです


が、返事は「からあげくん食べたい」でした・・・
 


ま、私を含め3人ともやっていけなかったわけですが。


 



 こうして本当に四国一周に出発する事になりました。ちなみに片道200キロはありそうだと告げると 返事は


「思ったより近いね」
でした。彼の脳は一番大事な回線がショートしているみたいです。
 




 二時間後、80キロ近く進みハンバーガーを食べる弾丸ツアーご一行様。この調子なら今日中に一周して


帰ってこれるんじゃないだろうかと一瞬思ったので、私の頭も相当におめでたいです。







 ちなみにここで林が1400円しか持っていない事実が判明。「逆さに振っても鼻血も出ない」


うですが、出なくてもいいのでとりあえず振ってやりたいです。




間違った距離計算ぶんのガソリン代すらも持ってないのに、ダブルバーガーを食べているこの男。

 

 



・・・この破壊的な金銭感覚・危機感のなさが、この後も大きく彼の人生を狂わして行くことになります。

 

 




 さて。

 

 この後 夜まで観光一切無しのガチンコツアーで愛媛を横断、目指す香川に入ります。

 

 途中親切に道を教えてくれたウルトラ警備隊のようなヘルメットのオッチャンと記念撮影をしたり、

ケツが猛烈に痛くなってきたので 3人とも立ち乗りで運転していて歩行者に爆笑されたりしましたが。






ウルトラ警備隊  「ウルトラ警備隊」で検索したら引っかかった画像







 痛みのあまりケツ おしりが3つに割れそうなのでコンビニの駐車場でカップラーメンとオニギリのディナー休憩


瀬戸大橋側の公園で野宿する事に決定します。ちなみにこの時点で林の残金はゼロ、「7倍にして返す」と言


うので貸してやりましたが、とりあえず彼は発言権を失いました。

 







 この後夜の国道○号線を疾走していると、後ろから”パラリラ パラリラ”と香ばしい音が聞こえてきました。



チャルメラにしてはエンジン音がイヤに爆音です。と、思う間もなく先頭の林をロックオンするリッターバイク。



 後ろの純を確認すると、すごい勢いで減速していました。私も 躊躇無く とても迷いましたが、急減速。
 



 林をオトリにして民家の庭に隠れました。総統はあまり良い部下に恵まれなかったようです。




それでもしばらくして 悲しげな原チャリの音がしたので表に出ると、どうやら無事だったようです。「信じてた」と言って林の無事を喜ぶ私たち。











 彼は「・・・どうゆう事?」と 疑問形でしたが、私たちも自分の身が可愛いのでしかたのない相談です。








 この後やっと瀬戸大橋に隣接する公園に到着しましたが、イルミネーションは開通当時などイベント事だけだと聞かされます。そのため

















 

 暗くて橋すら見えない事実が判明。













 

 

 ・・・私は力なく公園のアスファルトに横たわるとすぐに寝ることにしました。もう何も言う気力が残ってなかったので。


 
 このあと公園に暴走族が入ってきたりして、彼らは一睡もできなかったそうで 一晩中「新入生の川村って子


を好きになった」とか非生産的な話をして夜を明かしたそうです。

 



 帰りの事は書く気にもなりませんが・・・私のバイクが故障して坂でストップ、

 

気が付かない二人に置いて行かれたり ヘルメットの頬当ての形に頬が黒ずみ、

 
デーモン小暮のようなメイクになって激ヤセと呼ばれたり 本当にどうでもいい話が満載です。





 そしてほうほうの体で帰宅したのは新学期前日の夜12時ジャスト、おみやげは切れ痔でした。

 



zi  効くのかしら。

 









 こうして私たちの 修行 旅行と夏休みは終わりました。

 

 

 


・・・ちなみに進学校だった私は新学期初日に行われた英語のテストで爆睡、2を取り

 林に至っては「夕方 目が覚めた」そうです。

 

 

 


 


 私たちは今も思い出に残る旅行と、 焦げたアスファルトの夏の日を愛していました。